Fermat の原理の誤解:光は極大経路も通る!

Fermat の原理は「光は最短時間で到着する経路を通って伝播する」とよく述べられますが, 厳密にはこれは正しくありません. あくまでも考えている空間が光線で満たされており, どの光線も交差を持たないときにのみ成立する言明で, 正確には次のように言わなければなりません.

Fermat の原理 屈折率 $n(x,y,z)$ に対し, 点Aから点Bへの光の経路が実現される条件は$$\delta \int _ {A}^{B} n(x,y,z)\,ds=0$$

では, 本当に極大経路など存在するのでしょうか?


平面上に異なる2点A, Bを取り「Aからの距離とBからの距離の和が一定」となる点の軌跡を考えます . 結論から言えば, これは点A, Bを焦点とする楕円です. この楕円に沿った反射鏡を置き, 点Aから点Bまでの光の経路を考えましょう.

楕円上の点で反射する経路は, すべて同じ長さであるから楕円に沿って経路を動かしても変化などないので実現経路です. したがって (実現経路なのだから) 別方向への変化に対しても変分が $0$ になるはずです.

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図のPのような変化を考えると, たしかに極大経路になっていることがわかります. ちなみに, Qのような変化を考えると極小経路になっているといえます.