解の配置問題 集大成 〜なぜ判別式・グラフの軸・両端の値を考えるのか〜

はじめに

解の配置問題とは, 方程式 $f(x;a_1,a_2,\dots)=0$ について, 「ある範囲 $I$ にある個数の解をもつ」というパラメータ $a_1,a_2,\dots$ に関する条件を明示的に求める問題のことです. $f(x)$ の次数が $1$ の場合は自明であり, $4$ 以上の場合は一般には難しいのでほぼ出題されず, $3$ の場合は手法が限られているので簡単です. しかし $2$ の場合は難問が出題されやすくなります. この原因としては

  • $2$ 次関数特有の性質に依る議論が多い
  • 数学Ⅰの範囲であるので厳密な議論があまりできない
  • グラフに頼りつつもかなり高度な直観的議論を要求される

といったことが挙げられるでしょう. 解の配置問題は受験数学において, 管見によれば, 最も混沌とした分野です. なぜ「判別式・グラフの軸・両端の値」を考えれば本当にそれでちゃんと十分になるのかしっくり来ておらず, 「少なくとも $1$ つ」という文言が出てきたら脳死でパラメータ分離で計算に持ち込むという態度を取っていました. そこで筆者の受験勉強の過程として解の配置問題について整理してみたものをノートとして公開しておきます.

$2$ 次関数

定義1. (判別式) $2$ 次方程式 $ax ^ 2+bx+c=0$ の判別式とは $D=b ^ 2-4ac$ のことである.
定義2. (軸, 頂点) $2$ 次関数 $f(x)=ax^2+bx+c$ のグラフ $y=f(x)$ のとは直線 $x=-\dfrac{b}{2a}$ のことであり, 頂点とは点 $\left(-\dfrac{b}{2a},-\dfrac{D}{4a}\right)$ のことである.
注意. 以後, この節では $f(x)$ を $2$ 次関数とし, $x ^ 2$ の係数を正として議論します. 負の場合は $-f(x)$ を考えることで以下の議論がすべて適用できます.

舞台設定

パラメータの付き方で2通り:

  • 範囲
  • 方程式

しかしながら, 範囲がパラメータ付けされていたとしても一旦固定した上で議論すればよいので, 以下では方程式だけがパラメータ付けされている場合だけを考察します.

範囲で3通り:

  • 閉区間
  • 半開区間
  • 開区間

ただし半開区間は開区間の話に帰着できるので結局考えるのは閉区間と開区間の場合です.

解の個数で5通り:

  • $0$ 個 (=存在しない)
  • (ただ) $1$ 個
  • (相異なる) $2$ 個
  • 重複度含め $2$ 個
  • 少なくとも $1$ 個
非常に重要な注意. 「 $2$ 次方程式の $2$ 解」は重解も含みますが, 「 $2$ 次方程式が実数解を $2$ 個もつ」は一般に重解は含まれません. また「重複度含め $2$ 個」というのは「相異なる $2$ 個か重解 $1$ 個か」ということで, 決して「重解だけ」ではありません.
注意. $n$ 次方程式の解が $n$ 個以下であることは因数定理から容易に従います. 代数学の基本定理を持ち出す必要は決してありません.

武器

まずは初期段階から準備できるいくつかの武器を取っていきましょう.

解の公式

そもそも $2$ 次方程式の解の公式はかなり簡明な形で表されていることから「解を表して題意を満たすよう不等式を計算する」という方法は一つの素朴な解法の選択肢となります.

問題3. 方程式 $x^2+2ax+2=0$ が $(0,2)$ に相異なる $2$ 実数解をもつための条件を求めよ.
解答. 解 $x=-a\pm\sqrt{a ^ 2-2}$ が $(0,2)$ 内の相異なる $2$ 実数となることは $0<-a-\sqrt{a ^ 2 - 2}<-a+\sqrt{a ^ 2-2}<2$, すなわち $\boxed{-\dfrac{3}{2} < a < - \sqrt{2}}$ と同値.

しかし一般論としてパラメータが多くなればなるほどこの手の不等式を正しく解ききることは計算ミスという観点でも解く時間という観点でも困難な点が多いです. そこで $2$ 次関数特有の性質を考えることで適切に解けるものはサッと解く力が求められているわけであり, その際には (結果と論理が合っていれば) グラフによる直観的な議論も任意に援用してよいことになっています. 解の配置問題に限らず高校数学においてグラフを書くことが公に認められている以上, 述語論理だけで押し切るのが大変だと思われた場合にはグラフによる直観的な議論を適切なレベルで援用することはかなり大切な手法です.

解と係数の関係

命題4. 実数 $\alpha$, $\beta$ に対し $$\begin{aligned} \alpha > 0 \land \beta > 0 &\iff \alpha + \beta > 0 \land \alpha \beta > 0 \\ \alpha > 0 \lor \beta > 0 &\iff \alpha + \beta > 0 \lor \alpha \beta < 0 \end{aligned}$$
証明. 2行目は1行目から容易に示される. 1行目の $(\implies)$ は明らかなので $(\impliedby)$ を示す. $\alpha \beta > 0$ は $\alpha$ と $\beta$ が同符号であることと同値であり, $\alpha+\beta>0$ より, $\alpha$ も $\beta$ も正である.
注意. 等号がついた場合でも当然成立します.

これを用いることで「正となるような」という条件が代数的な操作だけで簡単に解けるようになります.

問題5. $2$ 次方程式 $x^2+ax+b=0$ について (1) $2$ 解がともに正となるような条件と (2) 正の解をもつような条件を求めよ.
解答. (1) $2$ 解がともに正となるための必要十分条件は, $x^2+ax+b=0$ が実数解をもち, かつ $2$ 解の和と積がともに正となることである. これは $D=a^2-4b\geq0\land-a>0\land b>0$, すなわち $\boxed{b\leq\dfrac{1}{4}a^2\land a<0\land b>0}$ と同値である.
解答. (2) 正の解をもつための必要十分条件は, $x^2+ax+b=0$ が実数解をもち, かつ $2$ 解の和が正または積が負となることである. これは $D=a^2-4b\geq0\land(-a>0\lor b<0)$, すなわち $\boxed{b\leq\dfrac{1}{4}a^2\land(a<0\lor b<0)}$ と同値である.

ところで $4$ 次以上の関数は微分法によりグラフを書き定数分離をするなどといったことで調べるしかありませんが, 実は複 $2$ 次式のように「たしかに $4$ 次ではあるが本質的に $2$ 次関数」という場合が当然存在します.

問題6. (複 $2$ 次式) $x ^ 4+ax ^ 2+b=0$ が (1) 異なる $4$ 実数解をもつ条件と (2) 実数解をもつ条件を求めよ.
解答. (1) $x ^ 2=t$ とおくと, このような実数 $x$ が $2$ 個存在するための必要十分条件は $t>0$ である. よって, $x ^ 4+ax ^ 2+b=0$ が異なる $4$ 実数解をもつための必要十分条件は, $t ^ 2+at+b=0$ が異なる正の $2$ 実数解をもつことである. これは $D=a ^ 2-4b > 0$ かつ $2$ 解の和と積が正であることと同値であり, すなわち $\boxed{b<\dfrac{1}{4}a ^ 2\land a<0\land b>0}$ である.
解答. (2) $x ^ 2=t$ とおくと, このような実数 $x$ が存在するための必要十分条件は $t\geq 0$ である. よって, $x ^ 4+ax ^ 2+b=0$ が実数解をもつための必要十分条件は, $t ^ 2+at+b=0$ が $0$ 以上の実数解をもつことである. これは $D=a ^ 2-4b \geq 0$ かつ $2$ 解の和が $0$ 以上または積が $0$ 以下であることと同値であり, すなわち $\boxed{b\leq\dfrac{1}{4}a ^ 2\land(a\leq0\lor b\leq0)}$ である.

パラメータ分離 (定数分離)

パラメータが $1$ 個で (パラメータに関し) $1$ 次のときに使える戦略です. 一般的には $\dfrac{f(x)}{g(x)}=a$ として曲線 $y=\dfrac{f(x)}{g(x)}$ と直線 $y=a$ の共有点の $x$ 座標を考えます. 数Ⅲの知識が必要ですが描きさえすれば確実に解けます. $f(x)=ag(x)$ とする場合は $\deg{g(x)}\leq1$ のときだけ有用です. もちろんこれはグラフの議論に依存していますが, むしろそうやって闘いたいときに取る戦法なのです.

問題7. $x ^ 2+(a-2)x-3a+1=0$ が $(0,2)$ に解をもつ条件を求めよ.
解答. 与式は $(x-1)^2=-a(x-3)$ と変形でき, これが $(0,2)$ に解をもつことは, 放物線 $y=(x-1)^2$ と直線 $y=-a(x-3)$ が $0 < x < 2$ で共有点をもつことと同値である. グラフより $-1 < -a \leq 0$ すなわち $\boxed{0\leq a < 1}$ が求める条件であった.

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一般論

注意. もし微分法を知っている場合は, 以下の命題において「微分係数が正なら軸の右側, 負なら左側, $0$ なら頂点」という事実を用いて適宜置き換えることができます.

$0$ 個

判別式で場合分けします.

  • $D<0$ のとき, 必ず $0$ 個となる.
  • $D=0$ のとき, 軸が範囲外であればよい.
  • $D>0$ のとき, 範囲の左外側と右外側でそれぞれ $1$ 個の解を持てばよい.

$1$ 個

開区間

$(a,b)$ に解が唯一存在する条件をそのまま書くことはできません. よって次の事実を用いるのが最も楽です.

命題8. $(a,b)$ 内の解は, $f(a)f(b)<0$ なら唯一存在し, $f(a)f(b)>0$ なら存在しないか重複度含め $2$ 個かである.
非常に重要な注意. $(a,b)$ 内に解が唯一存在するからといって $f(a)f(b)<0$ であるとは限りません. これは解の配置問題を困難にさせる一因です.
証明. 前者を示す. 存在性は中間値の定理から従う. 唯一性を示す. $a < c_1 < c_2 < b$ なる $c_1$, $c_2$ に対し $f(c_1)=f(c_2)=0$ であったとすると, $2$ 次関数の性質により $x < c_1$ および $x > c_2$ に対し $f(x) > 0$ であるが, $a < c_1$ かつ $b > c_2$ より $f(a)f(b) > 0$ となりこれは仮定と矛盾する.
後者を示す. $(a,b)$ 内にただ $1$ つの解が存在するということがありえないことを示せばよい. $2$ 解 $\alpha$, $\beta$ が $a < \alpha < b\leq\beta$ を満たしていた (この順序で一般性を失わない) ならば, $2$ 次関数の性質により $f(a) > 0$, $f(b)\leq 0$ となりこれは仮定に矛盾している.
非常に重要な注意. $f(a)f(b)=0$ の場合は何も分からないので, $f(a)=0$ のときと $f(b)=0$ のときとでそれぞれ具体的に調べるしかありません.
問題9. $x^2-3x+a=0$ が $(0,2)$ にただ $1$ つ解をもつ条件を求めよ. ただし重解も含める.
解答. $f(0)f(2)=a(a-2)$ の符号で場合分けする.
  • 負のとき, すなわち $0 < a < 2$ のときただ $1$ つ解が存在する.
  • 正のとき, 解は存在しないか重複度含め $2$ 個である. 重解をもつならばそれは $x=\dfrac{3}{2}\in(0,2)$ で実現され $a=\dfrac{9}{4}$ となる.
  • $0$ のとき,
    • $f(0)=0$ すなわち $a=0$ ならば解は $x=0,3$ となり不適である.
    • $f(2)=0$ すなわち $a=2$ ならば解は $x=1,2$ となり題意を満たす.
以上より, $\boxed{0 < a\leq 2, a=\dfrac{9}{4}}$ が求める条件であった.

閉区間

命題10. $[a,b]$ 内の解は, $f(a)f(b)<0$ なら唯一存在し, $f(a)f(b)>0$ なら存在しないか重複度含め $2$ 個かである.
問題11. $x^2-3x+a=0$ が $[0,2]$ にただ $1$ つ解をもつ条件を求めよ. ただし重解も含める.
解答. $f(0)f(2)=a(a-2)$ の符号で場合分けする.
  • 負のとき, すなわち $0 < a < 2$ のときただ $1$ つ解が存在する.
  • 正のとき, 解は存在しないか重複度含め $2$ 個である. 重解をもつならばそれは $x=\dfrac{3}{2}\in(0,2)$ で実現され $a=\dfrac{9}{4}$ となる.
  • $0$ のとき,
    • $f(0)=0$ すなわち $a=0$ ならば解は $x=0,3$ となり題意を満たす.
    • $f(2)=0$ すなわち $a=2$ ならば解は $x=1,2$ となり不適である.
以上より, $\boxed{0 \leq a < 2, a=\dfrac{9}{4}}$ が求める条件であった.

$2$ 個

軸を $x=k$ とします.

開区間

命題12. $f(x)=0$ が $(a,b)$ に相異なる $2$ 実数解をもつことは (1) $D > 0$ かつ (2) $a < k < b$ かつ (3) $f(a), f(b)>0$ が成立することと同値である.
証明. 必要性は明らか. 十分性を示す. (1) より $f(k)=-\dfrac{D}{4a}<0$ であるから (2)(3) と命題8より ${}^{\exists!}\alpha\in(a,k), {}^{\exists!}\beta\in(k,b), f(\alpha)=f(\beta)=0$ である.
系13.
  • $f(x)=0$ が $a$ より大きい解と $a$ より小さい解をもつことは, $f(a) < 0$ と同値である.
  • $f(x)=0$ が $a$ より大きい異なる $2$ 解をもつことは, $D>0\land a < k\land f(a) > 0$ と同値である.
  • $f(x)=0$ が $a$ より小さい異なる $2$ 解をもつことは, $D>0\land k < a\land f(a) > 0$ と同値である.
問題14. (1996年 東大文理共通 第2問) $a$, $b$, $c$, $d$ を正の数とする. 不等式 $$\begin{cases} s(1-a)-tb > 0\\ -sc+t(1-d) > 0 \end{cases}$$ を同時にみたす正の数 $s$, $t$ があるとき, $2$ 次方程式 $x^2-(a+d)x+(ad-bc)=0$ は $-1 < x < 1$ の範囲に異なる $2$ 実数解をもつことを示せ.
証明. $b,c,s,t > 0$ のもとで与式は $\dfrac{1-a}{b} > \dfrac{t}{s}>0$ かつ $\dfrac{1-d}{c} > \dfrac{s}{t}>0$ と変形できるので $1-a>0$ かつ $1-d>0$ であり, $\dfrac{1-a}{b} > \dfrac{t}{s}$ かつ $\dfrac{t}{s} > \dfrac{c}{1-d}$ なる正の数 $s$, $t$ が存在するので $(1-a)(1-d)-bc>0$ である. このとき $2$ 次方程式 $f(x)=x^2-(a+d)x+(ad-bc)=0$ が $(-1,1)$ に異なる $2$ 実数解をもつことを示せばよい. $f(x)=0$ の判別式を $D$ とおくと, そのような $a,b,c,d$ の条件は $$\begin{cases} D=(a+d) ^ 2-4(ad-bc) > 0 \\ -1 < \dfrac{a+b}{2} < 1\\ f(-1)=1+(a+d)+(ad-bc) > 0\\ f(1)=1-(a+d)+(ad-bc) > 0\end{cases}$$ となる. これらは全て上の結果と $a,b,c,d > 0$ よりたしかに成立している.

閉区間

命題15. $f(x)=0$ が $[a,b]$ に相異なる $2$ 実数解をもつことは (1) $D > 0$ かつ (2) $a \leq k \leq b$ かつ (3) $f(a), f(b)\geq0$ が成立することと同値である.

重複度含め $2$ 個

命題12, 命題15で (1) を $D\geq0$ と置き換えればよいです.

少なくとも $1$ 個

解が少なくとも $1$ 個であるということは, 解がただ $1$ 個または重複度含め $2$ 個であることと同値です.

注意. 軸の位置で場合分けすることもできますが筆者は好きではないので割愛します.

開区間

問題16. (2015年 東大理系 第1問) 正の実数 $a$ に対して, 座標平面上で次の放物線を考える. $$C\colon y=ax^{2}+\frac{1-4a^2}{4a}$$ $a$ が正の実数全体を動くとき, $C$ の通過する領域を図示せよ.
解答. 求める領域は, $a>0$ のもとで, $f(a)=4(x^2-1)a^2-4ya+1=0$ が少なくとも $1$ つ正の解をもつ条件に等しい. $f(0)=1>0$ であることに注意する.
  • $|x|<1$ のとき, 必ず $1$ つ正の解を持つ.
  • $|x|=1$ のとき, 解は $a=\dfrac{1}{4y}$ なので $y>0$ であることが必要十分条件である.
  • $|x|>1$ のとき, $$\begin{cases}D/4=4y^2-4(x^2-1)\geq0\\-\dfrac{-4y}{2\cdot4(x^2-1)}>0\end{cases}$$ すなわち $$\begin{cases}x^2-y^2\leq1\\y>0\end{cases}$$ であることが必要十分条件である.
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閉区間

閉区間の場合だけ計算が非常に簡単になります.

命題17. $f(x)=0$ が $[a,b]$ において少なくとも $1$ 個の実数解をもつことは, [(1) $D\geq0$ かつ (2) $a\leq k\leq b$ かつ (3) $f(a),f(b)\geq0$] または (4) $f(a)f(b)\leq0$ が成立することと同値である.
証明. 必要性は明らか. 十分性を示す. (4) $f(a)f(b)\leq0$ の場合は少なくとも $1$ 個の解が必ず存在している. $f(a)f(b)>0$ の場合は命題10より $0$ 個か重複度含め $2$ 個かであるが, 後者に限るには (1) $D\geq0$ かつ (2) $a\leq k\leq b$ かつ (3) $f(a),f(b)\geq0$ を課せばよい. (3) に $f(a)f(b)>0$ は含まれているので $[(1)\land(2)\land(3)]\lor(4)$ でよい.

$3$ 次関数

命題18. $3$ 次関数が極値を持つとき, 必ず極大値と極小値を $1$ つずつ持ち, かつ極大値は極小値より大きい.

これは $3$ 次関数特有の性質です.

定理19. $f(x)$ を $3$ 次関数とし, $2$ 次方程式 $f'(x)=0$ の判別式を $D$, 存在するならば $2$ 解を $\alpha$, $\beta$ とする. このとき $3$ 次方程式 $f(x)=0$ の実数解の個数は次のように分類される.
  • $1$ 個: $(D>0\land f(\alpha)f(\beta)>0)\lor D\leq0$
  • $2$ 個: $D>0\land f(\alpha)f(\beta)=0$
  • $3$ 個: $D>0\land f(\alpha)f(\beta)<0$
問題20. 点 $(a,b)$ から曲線 $C\colon y=x^3+kx$ に引ける接線の個数を分類せよ.

実はこのような $3$ 次関数に引ける接線の個数は変曲点での接線を引くことで視覚的に分類することができます.

注意. 一般の $3$ 次関数は, 平行移動で $2$ 次の項と定数項を消し, 拡大縮小で $3$ 次の係数を $1$ にすることでこの形に帰着できます.
解答. $f(x)=x ^ 3+kx$ とおく. 点 $(t,f(t))$ における $C$ の接線の方程式は $$y=(3t ^ 2+k)x-2t ^ 3$$ であり, これが点 $(a,b)$ を通ることは $$g(t)\coloneqq-2t^3+3at^2+ka-b=0$$ が成り立つことと同値であり, 「点 $(a,b)$ から曲線 $C\colon y=x ^ 3+kx$ に引ける接線の個数」は「方程式 $g(t)=0$ の実数解の個数」に一致している.
  • $1$ 個引けるのは, $a=0$ のときと, $a\neq0$ かつ $(ka-b)(a^3+ka-b)>0$ のとき.
  • $2$ 個引けるのは, $a\neq0$ かつ $(ka-b)(a^3+ka-b)=0$ のとき.
  • $3$ 個引けるのは, $a\neq0$ かつ $(ka-b)(a^3+ka-b)<0$ のとき.
$y=f(x)$ の変曲点 $(0,0)$ での接線が $y=kx$ であることに注意すると次のように図示できる. f:id:all_for_nothing:20210211175603p:plain
問題21. (2018年 東大理系 第4問) $a>0$ とし, $f(x)=x ^ 3-3ax ^ 2$ とおく. 次の 2 条件をみたす点 $(a,b)$ の動きうる範囲を求め, 座標平面上に図示せよ.
条件1: 方程式 $f(x)=b$ は相異なる $3$ 実数解をもつ.
条件2: さらに, 方程式 $f(x)=b$ の解を $\alpha < \beta < \gamma$ とすると $\beta > 1$ である.

これは東大側がわざわざパラメータ分離してくださっている例です.

略解. f:id:all_for_nothing:20200508062812p:plain $$\boxed{\begin{cases}a>1\\-2a ^ 3 < b < 1-3a ^ 2\end{cases}}$$ f:id:all_for_nothing:20210213135311p:plain

演習問題

問題22. (1988年 東大理系 第3問) $C$ を $y=x^3-x, -1\leqq x\leqq1$ で与えられる $xy$ 平面上の図形とする. 次の条件をみたす $xy$ 平面上の点 $P$ 全体の集合を図示せよ.
「 $C$ を平行移動した図形で, 点 $P$ を通り, かつもとの図形 $C$ との共有点がただ $1$ 点であるようなものが, ちょうど $3$ 個存在する.」
解答. 結果のみ記す. $$\boxed{\begin{cases} -1 < x < 1\\ x\neq0\\ \left(-\dfrac{x^3}{9}+x+y\right)\left(-x^3+x+y\right)>0\\ y\leq\dfrac{1}{4}\left(x+1\right)\left(x-1\right)\left(x-3\right)\\ y\geq\dfrac{1}{4}\left(x+1\right)\left(x-1\right)\left(x+3\right) \end{cases}}$$ f:id:all_for_nothing:20210211211430p:plain

参考文献

清史弘. (2003). 「受験数学と教えられない数学」. 『数学・受験教科書』, 12. SEG出版.
K会. (2018). 『関数』. 河合塾.