there is と there’s の違い

久しぶりに Hoobastank を聴いていたら、あることを思い出しました。

I’m not a perfect person
There’s many things I wish I didn’t do

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実は there is + 複数名詞 は著しく容認度が低い一方で、there’s + 複数名詞 は比較的容認度が高いことが知られています。これは単に「くだけた表現では単複が一致しない」という程度のものではなく、むしろ there’s が文法化を起こしていると見るべきです。

itre.cis.upenn.edu

調べた限り、日本語の文献でも次のような記述が確認できました。

There 構文の be 動詞は、文法上後続する主語と数が一致しますが、口語では主語が複数であっても、There’s が固定された表現として使われることが多い。たとえば,次のような表現もよく使われます。
25. There’s a bed, a table, and two chairs in this room.
この部屋にはベッドが一台,テーブルが一台,椅子が二脚備えられています。
←[There’s] a bed, a table, and two chairs (are) in this room.
上の図は there’s が柔軟性に欠け,形式化・固定化し,There’s の「存在」の意味を失いかけていることを意図的に表したものです。There’s の意味が薄れ,後続する主語である a bed, a table, and two chairs が強調され,特に a bed に焦点が定まったものと解釈することもできます。

全体を通して,冠詞類は不定冠詞が,名詞は抽象性の高い名詞が好んで用いられていることがわかったが,縮約以前の形式においては,動詞の時制や数を過去および複数にすることによって,また名詞の数を複数にすることによって,具体性のある名詞が集中して出現していることがわかった.
また,具体性のある名詞は,縮約形においてさらに顕著に認められ,その際名詞の数は,縮約以前よりも複数名詞である確率が高いことがわかった.それによって there is とその縮約形である there’s の違いが,単なる形態的変化ではなく,意味的・機能的変化を及ぼしていることが明らかになった.
本稿ではこうした制約をBolinger (1977) のいう「場面設定」の更なる手段であると捉え,そうした現象が認められるそもそもの要因として,当該構文が非人称構文と人称構文を極にした連続体の中に位置する構文であることが関係しているのではないかとの提案を行った.このことは,これまで独立したものとして個別に扱われてきたこれらの諸構文間の関連を見出すことにつながるものと考えられる.

メモ:いつか読む。