有向角を用いたミケルの定理の証明

Miquel の定理は点の位置による場合分けが非常に煩雑なので一般的には省略して証明されますが, 有向角を導入することで統一的に示すことができます. 発想自体は Chen (2016) の第1章に基づいておりますが, 定義が曖昧だったり証明のコーナーケースが埋められていなかったりしましたので, 行間を埋めて簡潔に証明し直しました.

定義1. (有向角) 始線 $OA$, 動径 $OB$ の一般角 $\theta$ に対し, 有向角 $\measuredangle{AOB}$ を $\bmod\,\pi$ で $\theta$ と等しくなるように定める.
定理2. (共円四辺形定理) どの3点も共線でない相異なる4点 $A$, $B$, $C$, $D$ が共円であるための必要十分条件は $\measuredangle{ACB}=\measuredangle{ADB}$.
定理3. (接弦定理) 三角形 $ABC$ と平面上の点 $P$ に対し, 直線 $PA$ が三角形 $ABC$ の外接円の接線であるための必要十分条件は $\measuredangle{PAB}=\measuredangle{ACB}$.
定理4. (Miquel の定理) 三角形 $ABC$ と, 直線 $BC$, $CA$, $AB$ 上の点 $D$, $E$, $F$ (ただしいずれも点 $A$, $B$, $C$ とは一致しない) に対し, 三角形 $AEF$, $BFD$, $CDE$ の外接円は1点で交わる.
証明. 三角形 $BFD$, $CDE$ の外接円が接しているとき, 接点である点 $D$ での共通接線を引き, それぞれに接弦定理を適用して $\measuredangle{AED}=\measuredangle{AFD}$ を得るため, 点 $A$, $E$, $F$, $D$ は共円であり, $D$ が唯一の交点であった.
接していないとき, 交点のうち点 $D$ でない方を点 $K$ とおくと $\measuredangle{FKD}=\measuredangle{FBD}=\measuredangle{ABC}$, $\measuredangle{DKE}=\measuredangle{DCE}=\measuredangle{BCA}$ であり, $\measuredangle{FKD}+\measuredangle{DKE}+\measuredangle{EKF}=0$, $\measuredangle{ABC}+\measuredangle{BCA}+\measuredangle{CAB}=0$ から $\measuredangle{CAB}=\measuredangle{EKF}$ を, 点 $E$, $F$ の定め方から $\measuredangle{CAB}=\measuredangle{EAF}$ を得るため, 点 $A$, $E$, $F$, $K$ は共円であり, $K$ が唯一の交点であった.

参考文献

Chen, E. (2016). Euclidean geometry in mathematical olympiads. Mathematical Association of America.