Exploring Language Structure と格闘する学生たち

all-for-nothing.com ここでも紹介したように、東京大学大学院人文社会系研究科の言語学研究室が出しているガイダンス資料の「言語学を学ぶ参考情報 (2/2)」(p. 19)に「言語分析」の資料としても挙げられている Payne, Thomas Edward. 2006. Exploring lan…

Cohenは連続体濃度が到達不能基数だと考えていた

最近いろいろとあって連続体濃度について考える必要が出てきたので,そういえば集合論者の人々はどう思っていたんだっけなと調べ直してみた. Cantor は $\aleph_1$,Gödel と初期の Woodin は $\aleph_2$,近年の Woodin は $\aleph_1$ と考えたらしい.要…

デルタ18面体は存在しない:フロイデンタール・ファンデルヴェルデン「あるユークリッドの主張について」

訳者序 本稿は Freudenthal, H; van der Waerden, B. L. (1947). “Over een bewering van Euclides” (“On an assertion of Euclid”), Simon Stevin, 25: 115–121 の日本語訳を 10 年留保によって公開したものである.本文中の訳注は亀甲括弧〔……〕に入れて提…

K会数学科カリキュラムの体験談

どうにも年を経るにつれて少しずつ思い出に綻びばかりが目立つようになるようなので、青春時代の良い思い出の大きな一つとして河合塾K会の数学科のカリキュラムを受講したときの感想でも書き記しておこうと思います。 www.kawai-juku.ac.jp 今は名称と現代数…

『TeXブック』の delimited parameter の誤訳

TeX

今年の三が日は shukutoiya と『$\TeX$ ブック』のゼミをしていましたが、得られた結論は「この本はまったく説明になっていない」でした。 はっきりいって、Knuthは、コンピュータ・サイエンティストとしてはセンス・ゼロ、要するに馬鹿である。それは、あの…

岩波文庫『不完全性定理』の誤訳……?

問題 以下は、Kurt Gödel が 1931 年に出版した論文 Über formal unentscheidbare Sätze der Principia mathematica und verwandter Systeme I の第三段落です(ただし、ゲーデル全集を底本としたうえで、いくつかの致命的な誤植を修正してあります)。下線…

東大言語学 院試(博士)2017-4

東京大学言語学研究室の大学院博士課程の専門科目問題の 2017-4 は、ある言語(言語名は今のところ特定できていません)の所有表現の構造と形態音韻的な規則を分析させる問題です。 間違いや不適切な点があれば、コメント欄やお問い合わせフォーム、Twitter …

ポプテピピックPV ロシア語 グロス付き対訳

誤りや不適切な点が含まれていた場合には、ご報告いただけると幸いです。グロスの振り方は、風間伸次郎『28言語で読む「星の王子さま」 世界の言語を学ぶための言語学入門』に則ります。 www.youtube.com Конечно, это же японское сокровище. конечно эт-о …

minphonfeat: 最小の弁別素性や自然類を Python で自動決定する

Hubie Chen and Mans Hulden. 2018. The Computational Complexity of Distinctive Feature Minimization in Phonology. In Proceedings of the 2018 Conference of the North American Chapter of the Association for Computational Linguistics: Human La…

国際言語学オリンピックの解説リンク集

IOL Sample Problems は別に入れる必要がないと思ったので、このリンク集からは省いています。日本語で書かれた解説はことはじをご覧ください。 他にもIOLやAPLOの解説がありましたら、ぜひご教示ください。 英語 IOL 2003-1 Transcendental Algebra – an I.…

私の学問観2022

King Gnu の “Teenager Forever” には十代にしか歌えない響きがあったはずなのに、今年でついにその想いを放棄しなければならなくなりました。十代の苦しみをもう一度体験することだけは嫌なので、この一方向性そのものには罪はないどころかそれ自体が救いで…

Zoom に自動で参加するには

メモ.Mac での設定.Automator でカレンダーアラームにより open "zoommtg://zoom.us/join?confno=<ミーティングID>&pwd=<パスコード>" というシェルスクリプトを実行させればよく,環境設定で指定時間の数分前にスリープが解除されるようにしておけばよい.

高速道路のカーブの設計(東大後期 総合科目II 1996-2)

少し前に曲率の説明をする機会があり,その際に次の問題を紹介しました.書いておかないとどうせ忘れるので,メモしておきます. 高速道路のカーブの設計を考える.この際,自動車の運転者にとって運転しやすい自然なカーブ形状が望ましい.そこで,自動車の…

JMO 2017-本選-1 と TOT 1998-秋SA-1(b)

数年前に友人が面白がっていた事実を久しぶりに発掘したのでメモしておきます: 1. $a$, $b$, $c$ を正の整数とするとき, $a$ と $b$ の最小公倍数と, $a+c$ と $b+c$ の最小公倍数は等しくないことを示せ. 第27回(2017年)JMO本選の問題 【基礎 1.7.11】(199…

東大言語学 院試(博士)2018-4

東京大学言語学研究室の大学院博士課程の専門科目問題の 2018-4 は、ある膠着的な言語(言語名は今のところ特定できていません)において主語と目的語の接辞が付加された動詞の内部構造を分析させる問題です。 間違いや不適切な点があれば、コメント欄やお問…

東大言語学 院試(博士)2022-3:ワルング語

東京大学言語学研究室の大学院博士課程の専門科目問題の 2022-3 は、ワルング語の再帰や逆受動を表す形態素 -gali を分析させるものです。 間違いや不適切な点があれば、コメント欄やお問い合わせフォーム、Twitter の DM などでぜひご教示ください。 問題 …

東大言語学 院試(博士)2020-3:クルンフェ語

東京大学言語学研究室の大学院博士課程の専門科目問題の 2020-3 は、クルンフェ語のある名詞クラスにおける単数形と複数形を単一の基底形から導く音韻交替規則を考察させる問題であり、Odden, D. (2013). Introducing phonology (2nd ed.). Cambridge Univer…

東大言語学 院試(博士)2020-4:マドゥラ語

東京大学言語学研究室の大学院博士課程の専門科目問題の 2020-4 は、マドゥラ語の接尾辞 -e と -agi がどのように語順のパターンの違いを生み出すのか考察させる問題です。 間違いや不適切な点があれば、コメント欄やお問い合わせフォーム、Twitter の DM な…

東大言語学 院試(博士)2021-4

東京大学言語学研究室の大学院博士課程の専門科目問題の 2021-4 は、ある膠着的な言語(言語名は今のところ特定できていません)で所有者と所有物を含む他動詞文が意味を大きく変えることなく二通りに表現できることを分析させる問題です。 間違いや不適切な…

東大言語学 院試(博士)2022-4:形容詞のない言語

東京大学言語学研究室の大学院博士課程の専門科目問題の 2022-4 は、ある言語(言語名は今のところ特定できていません)に形容詞という語類を設定することの妥当性を論じさせる問題です。名詞や動詞が普遍的に認められる語類であるのに対し、形容詞が普遍的…

東大言語学 院試(博士)2017-3:比較言語学

東京大学言語学研究室の大学院博士課程の専門科目問題の 2017-3 は、三つの言語群の系統関係を語彙セットの比較によって論じる比較言語学の問題です。 間違いや不適切な点があれば、コメント欄やお問い合わせフォーム、Twitter の DM などでぜひご教示くださ…

東大言語学 院試(博士)2019-3:モンゴ語のサンディ現象と自律分節音韻論

東京大学言語学研究室の大学院博士課程の専門科目問題の 2019-3 は、モンゴ語のサンディ現象を出題したものです。この現象は Goldsmith (1976) により提唱された自律分節音韻論の文脈でよく登場するものであり、 Odden, D. (2013). Introducing phonology (2…

東大言語学 院試(博士)2019-4:逆行態

東京大学言語学研究室の大学院博士課程の専門科目問題の 2019-4 は、去年の三月ごろにも Twitter 上で話題になった逆行態(反転)を出題したものです。言語名は今のところ特定できていません。 この問題は中国の Q&A サイトの知乎でも議論されています。 www…

東大言語学 院試(博士)2018-3:ニヴフ語の子音交替

東京大学言語学研究室の大学院博士課程の専門科目問題の 2018-3 は、ニヴフ語の子音交替における ‘natural class’ problem を出題したものです。どのように解答すべきか迷う部分もあり、出題者の意図を上手く汲み取りきれていないかもしれませんが、以下に示…

東大言語学 院試(博士)2021-3:後置形容詞と縮約関係節

東京大学言語学研究室の大学院博士課程の専門科目問題の 2021-3 は、後置形容詞が縮約関係節だと考えられることを論じる Cinque (2010) の一節を読解させる英語学の問題です。言語学の前提知識はほとんど必要なく、かつ英語の勉強にもなるので非常に教育的で…

「アリストテレス全集」「サルトル全集」「ニーチェ全集」「バートランド・ラッセル著作集」「プラトン全集」がオンラインで読める

www.ndl.go.jp アリストテレス全集(旧版) カテゴリー論・命題論・分析論前書・分析論後書 トピカ・詭弁論駁論 自然学 天体論・生成消滅論 気象論・宇宙論 霊魂論・自然学小論集・気息について 動物誌(上) 動物誌(下)・動物部分論 動物運動論・動物進行…

なぞなぞの言語学

小学生の頃に「なぞなぞほど下らないものはないからすべてパターン化して価値を消し去りたいな」と思っていたのですが、最近調べてみると言語学的な研究があるようです。今度暇な時に調べてみたいので、ひとまずメモしておきます。 まずは『言語学大辞典』「…

言語学オリンピックへの誘い:ルール・遊び方・勉強法

本記事は、私の中高時代の部活の合宿で行った「言語学オリンピックへの誘い」という講義の原稿です。言語学オリンピックについてまったく知らない中学生に話すことを想定しているので、学術的正しさを少し犠牲にして分かりやすさを優先した箇所もあります。…

国際生物学オリンピックの過去問題は CC BY-NC-SA 4.0 で配布されている

国際生物学オリンピック委員会は IBO の問題について次のような規定を設けています。 All IBO examination questions are published under the Creative Commons license CC BY-NC-SA (Attribution-NonCommercial-ShareAlike). The exam papers can be used …

LaTeX の論理デザインと視覚デザイン

TeX

追記 (2022-07-25 20:20). 普段は内輪向けに勉強録やメモを書いていたので失念していましたが、「引用部分の主従関係が明らかに逆転している」というご指摘をいただきました。もともと書こうと思っていたが面倒くさくて書くのをやめていたことを付け足し、引…