数学

ポリア「ある種の格子多角形の個数について」

訳者序 私がまだ高校一年生だったとき, 当時は中学生を担当していた私の恩師が, 道の数え上げに $q$ 二項係数が現れることを解説する課外授業を行うという告知を掲示板に貼っていたのを最近ふと思い出した. 老獪になった頭で久しぶりに色々考えて調べてみる…

holomorphic/meromorphic についての覚書

tetobourbaki.hatenablog.com id:tetobourbaki 氏のこの記事における主張を要約して注釈をつけておきます。 holomorphic はギリシア語の holos「全体」と morphe「形」からなる造語である。高木貞治『解析概論』によると、「正則関数」は holomorphic functi…

ブルバキ『数学原論』が全巻オンラインで読めるようになる

www.ndl.go.jp まだ始まってはいませんがやっと読めるようになったので、今のうちに全部まとめておきます。少し古めのフランス語圏の数学書や論文を読むと、すぐにブルバキを参照する必要が出てくるので本当に助かります。読むには「個人の登録利用者」の登…

球周角の定理は成り立たない

「円周角の定理」と呼ばれる主張には $\forall P.\ \angle{AOB}=2\angle{APB}$ $\forall P\forall Q.\ \angle{APB}=\angle{AQB}$ の二通りがあって, 2 は 1 の系なので本質的には 1 が効いているわけですが, 「円周角」の well-defined 性を保証するという観…

標数2の有限環の元の個数

今日ふと思い出しました.私の記憶違いでなければ,学部学生1年目に受けた◯先生(敢えて伏せ字)のある線形代数の講義の期末試験の1問目は,「1+1=0となる有限環の元の個数は2の冪であることを示せ」といったような感じの内容でした.なんとなく「お…

Furstenberg「素数の無限性について」

訳者序 2019-11-23 に「位相空間論による素数の無限性証明」という記事を書いたことがある*1のですが, 機会があって改めて見直してみるとやはり書き直す必要があることに気付いたので, せっかくですから10 年留保を使って Furstenberg, H. (1955). On the In…

純虚数の集合を表す記号

『獲得』*1の p. 113 には 集合 $\lbrace ti\mid t\in\R\rbrace$ を $\R i$ と表記しています. 以下同じ記号を断りなく用います. という注意があります. 私がこの記法に初めて出会ったのはたしか中三か高一かのときで, それはある友人が複素座標を解説する教…

sec, cosec, cot, crd, versin, haversin, exsec, ...

そのi鋭角の一方が $\theta$ である直角三角形i*1はすべて相似なので, 斜辺・対辺・隣辺のうち二つの辺の比は $\theta$ の関数として well-defined であり, その選び方は ${} _ {3}\mathrm{P} _ {2}=6$ 通りで $\sin$, $\cos$, $\tan$ の他に $\sec$, $\cose…

EGA: 代数幾何学原論

代数幾何学原論 A. GROTHENDIECK J. DIEUDONNÉ との共同執筆 序文 Oscar Zariski と André Weil へ 本論文とそれに続く多くの論文は, 代数幾何学の基礎に関する概論となることを意図している. 原則としてこの分野に関する特別な知識を何ら前提にせず, またそ…

逆像が像より自然な理由

卑近な例 逆像が像より自然な概念であるという話をしようとすると、多くの人は受験数学の悪しき業界用語「順像法・逆像法」に関する話だと受け止めてしまうようなので、少しだけ啓蒙的な話をしてみましょう。 写像 $f\colon X\to Y$ による $A\subset X$ の…

数学意味不明杉ワロタwwwwwwwwwwwwwwww

数年前に見た 2ch のスレを思い出しました。 viper.2ch.sc 現代数学のメインストリームたる代数幾何学の名著、ハーツホーンの定理 2.7.6 が話題になっています。 $X$ を Noether 環 $A$ 上の有限型のスキームとし, $\mathscr{L}$ を $X$ 上の可逆層とする. …

Re: 三平方の定理から始める Galois コホモロジー

高校一年の頃に執筆したポエムが発掘されたので, 本ブログで供養することにしました. 改めて見てみると稚拙な部分が多く見受けられますが, 今の筆者の興味が急速に SGA1 に向かっていることを考えると, 本稿に自分の原点を見出せるように思えます. 概要 Pyth…

中間値の定理の離散版

誰も書いている人がいないような気がしたので書いておきます. 定理. (中間値の定理の離散版) 整数 $a$, $b$ が $a 証明. 集合 $S\coloneqq \lbrace x \in \mathbf{Z} \cap [a, b] \mid f(x) 双対として $T\coloneqq \lbrace x \in \mathbf{Z} \cap [a, b] \m…

読書録:『宇宙と宇宙をつなぐ数学:IUT理論の衝撃』

概要 無限降下法 解の公式 導出 1:平方完成 導出 2:対称性 感想 概要 【MathPower2017】 07_講演「ABC予想と新しい数学」 今でも 2017 年当時リアルタイムで視聴したときのことを思い出せます。あれからもう四年も経ったわけですが、個人的にはまだ四年し…

Tohoku — 第 3 章 層に係数を持つコホモロジー

3.1. 層についての一般論 3.1. 層についての一般論 $X$ を (必ずしも分離的とは限らない) 位相空間とする. $\supset$ により順序付けられた $X$ の空でない開部分集合上に定義される集合の帰納系すべてを $X$ 上の集合の前層と呼ぶことを思い出そう (1.7 例 …

Tohoku — 第 2 章 アーベル圏におけるホモロジー代数

2.1. $\partial$ 関手と $\partial^*$ 関手 2.2. 普遍 $\partial$ 関手 2.3. 導来関手 2.4. スペクトル系列とスペクトル関手 2.5. 分解関手 2.1. $\partial$ 関手と $\partial^*$ 関手 $\mathbf{C}$ をアーベル圏, $\mathbf{C}'$ を加法圏, $a$ と $b$ を $a…

Tohoku — 第 1 章 アーベル圏についての一般論

1.1. 圏 1.2. 関手 1.3. 加法圏 1.4. Abel 圏 1.5. 無限和と無限積 1.6. 図式圏と遺伝する性質 1.7. 図式シェマにより定まる圏の例 1.8. 帰納極限と射影極限 1.9. 生成子と余生成子 1.10. 入射的対象と射影的対象 1.11. 商圏 1.1. 圏 次のことを思い出そう. …

Tohoku: ホモロジー代数のいくつかの点について

グロタンディーク全訳計画の第一弾: 1957 年に東北大学の東北数学雑誌で出版されたことから “Tohoku” の一語で呼ばれる Sur quelques points d’algèbre homologique (ホモロジー代数のいくつかの点について) です。

グロタンディーク全訳計画

資料一覧 原文や英訳は Mateo Carmona 氏が運営する次のサイトをご覧ください。 agrothendieck.github.io ただし SGA4½ は載っていません。 現存する和訳の一覧は次の通りです。 Tohoku: ホモロジー代数のいくつかの点について EGA: 代数幾何学原論 収穫と蒔…

空集合は何次元の多様体か?

前にこんな記事を書きましたが, 空集合を位相空間に含める流儀を取るとき, それは何次元の多様体になるのでしょうか? www.all-for-nothing.com 微分構造は本質的でないので, ここでは位相多様体だけ議論すれば十分です. 自然数を $0$ 以上の整数とします. …

空集合は位相空間か?

位相空間論といえばブルバキですが、その定義は次のようなものです。 DÉFINITION 1. On appelle structure topologique (ou plus brièvement topologie) sur un ensemble $X$ une structure constituée par la donnée d’un ensemble $\mathfrak{O}$ de parti…

親族関係の数学的構造

構造主義といえばクロード・レヴィ゠ストロース*1ですが、その主著『親族の基本構造』の第14章にはアンドレ・ヴェイユ(ブルバキの筆頭メンバー)が著した「いくつかの型の婚姻法則(ムルンギン型体系)をめぐる代数的研究について」という論文が収められて…

Fermat の最終定理の同値な表現

Fermat は Diophantus『算術』の問2-8「平方数を二つの平方数に分けよ」に対して次のような注釈を与えました。 原文 (1670) これは中世ラテン語なので少し読みにくいのですが、文字に起こすと次の通りです。 Cvbum autem in duos cubos, aut quadratoquadrat…

偽金貨問題とエントロピー

問題. (偽金貨問題) $N$ 枚の金貨のうち $1$ 枚が重さの異なる偽物である. 天秤を何回使えば判別可能か? $n$ 枚目の金貨が重いという結果を $n _ +$, 軽いという結果を $n _ -$, 等しいという結果を $0$ と表すとき, 確率空間は $\Omega=\lbrace 0,1 _ +,1 …

メネラウス・チェバの定理の逆は成り立たない?

舞台設定 線分 $AB$ の長さを $\overline{AB}$ と書きます. 点 $A_1,\dots,A_n$ が一直線上にあることを, $A_1,\dots,A_n$ が共線であると言います. 直線 $l_1,\dots,l_n$ が一点で交わることを, $l_1,\dots,l_n$ が共点であると言います. 点 $P$, $Q$, $R$ …

ドリフト (2020年 東工大物理 第2問)

電磁場中における質量 $m$, 電荷 $q$ の荷電粒子の運動を考察する. 断りのない限り, $q$ は正負いずれの値も取りうるものとする. 磁束密度 $\vec{B}$ は, 時間的に変化することはないとする. また, 磁束密度 $\vec{B}$ の向きは, 図1のように紙面の裏から表…

接点の個数と接線の本数について

よく数Ⅱの $3$ 次関数で「接点の個数と接線の本数が一致するから……」という “おまじない” を書くことが多いと思いますが、それと同時に $4$ 次関数などでは一般に成り立たないということもよく注意されていると思います。それは相異なる $2$ つ以上の点で接…

Basel 問題

問題1. (1990年 東工大後期 第2問) $n$ を $2$ 以上の整数とする. (1) $n-1$ 次多項式 $P_n(x)$ と $n$ 次多項式 $Q_n(x)$ ですべての実数 $\theta$ に対して $$\begin{aligned} \sin(2n\theta)&=n\sin(2\theta)P_n(\sin^2\theta),\\ \cos(2n\theta)&=Q_n(\s…

望遠鏡和による (等差)×(等比) 型数列の和の導出

数列 $\lbrace (ak+b)r ^ k\rbrace$ (ただし $r\neq1$ とする) の和 $$S _ n=\sum _ {k=1} ^ n(ak+b)r ^ k$$ を求めることをよく考える機会があります. 一般的には「公比を掛けて差を取る」という方法が紹介されていますが, これは添字の管理が非常に (特に…

まだロピタルの定理で消耗してるの?

メモを整理していたら, 大昔に友人に $$\lim _ {x\to0}\frac{x-\sin{x}}{x ^ 3}$$ を l’Hôpital の定理を使わずに教えてくれと聞かれたことをふと思い出しました. 当時の自分は次の画像を作って送ったようです. こんなパズルみたいな計算は嫌なので l’Hôpita…