数学

Tohoku — 第 2 章 アーベル圏におけるホモロジー代数

2.1. $\partial$ 関手と $\partial^*$ 関手 2.2. 普遍 $\partial$ 関手 2.3. 導来関手 2.4. スペクトル系列とスペクトル関手 2.5. 分解関手 2.1. $\partial$ 関手と $\partial^*$ 関手 $\mathbf{C}$ をアーベル圏, $\mathbf{C}'$ を加法圏, $a$ と $b$ を $a…

Tohoku — 第 1 章 アーベル圏についての一般論

1.1. 圏 1.2. 関手 1.3. 加法圏 1.4. Abel 圏 1.5. 無限和と無限積 1.6. 図式圏と遺伝する性質 1.7. 図式シェマにより定まる圏の例 1.8. 帰納極限と射影極限 1.9. 生成子と余生成子 1.10. 入射的対象と射影的対象 1.11. 商圏 1.1. 圏 次のことを思い出そう. …

Tohoku: ホモロジー代数のいくつかの点について

グロタンディーク全訳計画の第一弾: 1957 年に東北大学の東北数学雑誌で出版されたことから “Tohoku” の一語で呼ばれる Sur quelques points d’algèbre homologique (ホモロジー代数のいくつかの点について) です。

グロタンディーク全訳計画

追記 (20240823) 大規模言語モデルの飛躍的進歩に伴い,訳者一同のモチベーションがほぼ完全に失われてしまったため,今後は「いかに大規模言語モデルで処理しやすくするか?」という観点からの整備に注力いたします. 資料一覧 原文や英訳は Mateo Carmona …

空集合は何次元の多様体か?

前にこんな記事を書きましたが, 空集合を位相空間に含める流儀を取るとき, それは何次元の多様体になるのでしょうか? www.all-for-nothing.com 微分構造は本質的でないので, ここでは位相多様体だけ議論すれば十分です. 自然数を $0$ 以上の整数とします. …

空集合は位相空間か?

位相空間論といえばブルバキですが、その定義は次のようなものです。 DÉFINITION 1. On appelle structure topologique (ou plus brièvement topologie) sur un ensemble $X$ une structure constituée par la donnée d’un ensemble $\mathfrak{O}$ de parti…

親族関係の数学的構造

構造主義といえばクロード・レヴィ゠ストロース*1ですが、その主著『親族の基本構造』の第14章にはアンドレ・ヴェイユ(ブルバキの筆頭メンバー)が著した「いくつかの型の婚姻法則(ムルンギン型体系)をめぐる代数的研究について」という論文が収められて…

Fermat の最終定理の同値な表現

Fermat は Diophantus『算術』の問2-8「平方数を二つの平方数に分けよ」に対して次のような注釈を与えました。 原文 (1670) これは中世ラテン語なので少し読みにくいのですが、文字に起こすと次の通りです。 Cvbum autem in duos cubos, aut quadratoquadrat…

偽金貨問題とエントロピー

問題. (偽金貨問題) $N$ 枚の金貨のうち $1$ 枚が重さの異なる偽物である. 天秤を何回使えば判別可能か? $n$ 枚目の金貨が重いという結果を $n _ +$, 軽いという結果を $n _ -$, 等しいという結果を $0$ と表すとき, 確率空間は $\Omega=\lbrace 0,1 _ +,1 …

ドリフト (2020年 東工大物理 第2問)

電磁場中における質量 $m$, 電荷 $q$ の荷電粒子の運動を考察する. 断りのない限り, $q$ は正負いずれの値も取りうるものとする. 磁束密度 $\vec{B}$ は, 時間的に変化することはないとする. また, 磁束密度 $\vec{B}$ の向きは, 図1のように紙面の裏から表…

接点の個数と接線の本数について

よく数Ⅱの $3$ 次関数で「接点の個数と接線の本数が一致するから……」という “おまじない” を書くことが多いと思いますが、それと同時に $4$ 次関数などでは一般に成り立たないということもよく注意されていると思います。それは相異なる $2$ つ以上の点で接…

Basel 問題

問題1. (1990年 東工大後期 第2問) $n$ を $2$ 以上の整数とする. (1) $n-1$ 次多項式 $P_n(x)$ と $n$ 次多項式 $Q_n(x)$ ですべての実数 $\theta$ に対して $$\begin{aligned} \sin(2n\theta)&=n\sin(2\theta)P_n(\sin^2\theta),\\ \cos(2n\theta)&=Q_n(\s…

望遠鏡和による (等差)×(等比) 型数列の和の導出

数列 $\lbrace (ak+b)r ^ k\rbrace$ (ただし $r\neq1$ とする) の和 $$S _ n=\sum _ {k=1} ^ n(ak+b)r ^ k$$ を求めることをよく考える機会があります. 一般的には「公比を掛けて差を取る」という方法が紹介されていますが, これは添字の管理が非常に (特に…

まだロピタルの定理で消耗してるの?

メモを整理していたら, 大昔に友人に $$\lim _ {x\to0}\frac{x-\sin{x}}{x ^ 3}$$ を l’Hôpital の定理を使わずに教えてくれと聞かれたことをふと思い出しました. 当時の自分は次の画像を作って送ったようです. こんなパズルみたいな計算は嫌なので l’Hôpita…

受験数学における束 (pencil) について

束 (pencil) とは射影幾何学に由来する概念であり, もともとは Desargues の用いた ordonnance に端を発していますが, 代数幾何学における 1 次元の線形系も線形束 (linear pencil) と呼ばれています. ここではそのような射影幾何的・代数幾何的な背景には立…

Feynman の微分法 +α

Feynman は複雑な関数を微分する際に対数微分法を応用した手法を考案しました. 本稿では少しの改善を加えて具体例とともに Feynman の微分法を紹介します.

極座標における回転体の体積

問題1. (2012年慶医第4問・一部省略) (1) $0\leqq\alpha<\beta\leqq\dfrac{\pi}{2}$ かつ $R>0$ とする. 極座標 $(r,\theta)$ に関する条件 $$0\leqq r\leqq R,\ \alpha\leqq\theta\leqq\beta$$ により定まる図形を $x$ 軸のまわりに回転させて得られる立体…

Markov 兄弟の不等式

定理1. (Markov 兄弟の不等式) $\lVert f\rVert\coloneqq\displaystyle\max_{-1\leqq x\leqq1}|f(x)|$ と定め, $p$ を $n$ 次以下の多項式, $T_n(x)$ を第一種 Chebyshev 多項式とすると, $$\lVert p^{(k)}\rVert\leqq\lVert T_n^{(k)}\rVert\lVert p\rVert$…

ダイアモンドの二項演算 (AMC 10A 2016 #23・USA TSTST 2019-1)

問題1. (AMC 10A 2016 #23) A binary operation $\operatorname{\diamondsuit}$ has the properties that $a\operatorname{\diamondsuit}(b\operatorname{\diamondsuit}c) = (a\operatorname{\diamondsuit}b)\cdot c$ and that $a\operatorname{\diamondsuit…

すべての鋭角三角形に対し各面がそれと合同な四面体が存在すること

問題. (1999年 京大後期理系 第4問) $\triangle{ABC}$ は鋭角三角形とする. このとき, 各面すべてが $\triangle{ABC}$ と合同な四面体が存在することを示せ. 注. すべての面が合同な四面体のことを等面四面体と呼ぶ. 証明. $\triangle{ABC}$ は鋭角三角形な…

Lagrange 補間

問題1. (1961年 東大文理共通 第2問) $x$ の四次式 $f(x)$ において $$\begin{aligned} f(-0.2)&=2.226\\ f(-0.1)&=2.460\\ f(0)&=2.718\\ f(0.1)&=3.004\\ f(0.2)&=3.320 \end{aligned}$$ であるとき, $f'(0)$ を求めよ. もちろん $f(x)=ax ^ 4+bx ^ 3+cx ^…

並べ替え不等式と Chebyshev の不等式

定理1. (並べ替え不等式) 単調減少列 $\{x _ n\},$ $\{y _ n\}$ と, 置換 $\sigma\colon\{1,\dots,n\}\to\{1,\dots,n\}$ に対し $$\displaystyle\sum_{i=1}^nx_iy_i\geqq\sum_{i=1}^nx_iy_{\sigma(i)}\geqq\sum_{i=1}^nx_iy_{n-i+1}$$ これは本質的に次の問…

対称式の小ネタ

有理数 $a,b,c$ に対し, $a+b+c, 2(ab+bc+ca), 3abc$ が整数であったならば, $a,b,c$ は整数となることを示せ. $\alpha=a+b+c, \beta=2(ab+bc+ca), \gamma=3abc$ とおく. 方程式 $6(x-a)(x-b)(x-c)=6x ^ 3-6\alpha x ^ 2+3\beta x-2\gamma=0$ の解 $a,b,c$ …

数列の和から一般項を求めるときの場合分け

数列 ${a_n}$ の初項から第 $n$ 項までの和を $S_n$ とするとき, 次の等式が成り立つ. $$a _ n=\begin{cases} S _ n-S _ {n-1} & (n \geq 2)\\ S _ 1 & (n=1) \end{cases}$$ 数列 $a_n$ の初項から第 $n$ 項までの和 $S _ n$ が $S _ n=2 ^ n$ であるとき, …

軸の直交する放物線が4点で交わるなら共円

直交する放物線の軸が $x$ 軸, $y$ 軸に平行になるように座標軸を設定すると, 放物線の方程式は $py=x ^ 2+ax+b,$ $qx=y ^ 2+cy+d$ と表される. 共有点を $4$ つ持っているので, $$Q = \dfrac{ (q-a) ^ 2}{4} + \dfrac{ (p-c) ^ 2}{4} - b - d$$ とおくと, $…

1979年 京大理系数学 第3問

(1) は微分でゴリ押す以外にはこれしか方法がないはずですが, (2) に関してはこれが一番速くて自然だと思います. 勘違いをしていたらぜひ教えて下さい. (1) 変数 $t$ が $t>0$ の範囲を動くとき $$\begin{aligned} f(t) &=\sqrt{t}+\frac{1}{\sqrt{t}}+\sqrt…

2001年 東大文系数学 第4問

白石 $180$ 個と黒石 $181$ 個の合わせて $361$ 個の碁石が横に一列に並んでいる. 碁石がどのように並んでいても, 次の条件を満たす黒の碁石が少なくとも一つあることを示せ. その黒の碁石とそれより右にある碁石をすべて除くと, 残りは白石と黒石が同数とな…

2013年 阪大理系数学 第5問

$n$ を $3$ 以上の整数とする. $n$ 個の球 $K_1,$ $K_2,$ $\dots,$ $K_n$ と $n$ 個の空の箱 $H_1,$ $H_2,$ $\dots,$ $H_n$ がある. 以下のように $K_1,$ $K_2,$ $\dots,$ $K_n$ の順番に, 球を箱に $1$ つずつ入れていく. まず, 球 $K_1$ を箱 $H_1,$ $H_2,…

1980年 東大文系数学 第3問の自然な別解

1980年 東大文系 第3問 $n$, $a$, $b$, $c$, $d$ は $0$ または正の整数であって, $$ \left\{\begin{array}{l} a^{2}+b^{2}+c^{2}+d^{2}=n^{2}-6 \\ a+b+c+d \leqq n \\ a \geqq b \geqq c \geqq d \end{array}\right. $$ を満たすものとする. このような数…

多角形の自由度

数理哲人氏という方が学びエイドで「数理哲人の闘う数学【特別講座】戦後の東大」というマニアックな講座を開講なさっているのですが、そこで扱われていた次の問題がどうにも分からず一度挫折してしまいました。 1946年 帝大 工学部 第1問 同一平面上にある…