数学

受験数学における束 (pencil) について

束 (pencil) とは射影幾何学に由来する概念であり, もともとは Desargues の用いた ordonnance に端を発していますが, 代数幾何学における 1 次元の線形系も線形束 (linear pencil) と呼ばれています. ここではそのような射影幾何的・代数幾何的な背景には立…

Feynman の微分法 +α

Feynman は複雑な関数を微分する際に対数微分法を応用した手法を考案しました. 本稿では少しの改善を加えて具体例とともに Feynman の微分法を紹介します.

極座標における回転体の体積

問題1. (2012年慶医第4問・一部省略) (1) $0\leqq\alpha<\beta\leqq\dfrac{\pi}{2}$ かつ $R>0$ とする. 極座標 $(r,\theta)$ に関する条件 $$0\leqq r\leqq R,\ \alpha\leqq\theta\leqq\beta$$ により定まる図形を $x$ 軸のまわりに回転させて得られる立体…

Markov 兄弟の不等式

定理1. (Markov 兄弟の不等式) $\lVert f\rVert\coloneqq\displaystyle\max_{-1\leqq x\leqq1}|f(x)|$ と定め, $p$ を $n$ 次以下の多項式, $T_n(x)$ を第一種 Chebyshev 多項式とすると, $$\lVert p^{(k)}\rVert\leqq\lVert T_n^{(k)}\rVert\lVert p\rVert$…

ダイアモンドの二項演算 (AMC 10A 2016 #23・USA TSTST 2019-1)

問題1. (AMC 10A 2016 #23) A binary operation $\operatorname{\diamondsuit}$ has the properties that $a\operatorname{\diamondsuit}(b\operatorname{\diamondsuit}c) = (a\operatorname{\diamondsuit}b)\cdot c$ and that $a\operatorname{\diamondsuit…

すべての鋭角三角形に対し各面がそれと合同な四面体が存在すること

問題. (1999年 京大後期理系 第4問) $\triangle{ABC}$ は鋭角三角形とする. このとき, 各面すべてが $\triangle{ABC}$ と合同な四面体が存在することを示せ. 注. すべての面が合同な四面体のことを等面四面体と呼ぶ. 証明. $\triangle{ABC}$ は鋭角三角形な…

Lagrange 補間

問題1. (1961年 東大文理共通 第2問) $x$ の四次式 $f(x)$ において $$\begin{aligned} f(-0.2)&=2.226\\ f(-0.1)&=2.460\\ f(0)&=2.718\\ f(0.1)&=3.004\\ f(0.2)&=3.320 \end{aligned}$$ であるとき, $f'(0)$ を求めよ. もちろん $f(x)=ax ^ 4+bx ^ 3+cx ^…

並べ替え不等式と Chebyshev の不等式

定理1. (並べ替え不等式) 単調減少列 $\{x _ n\},$ $\{y _ n\}$ と, 置換 $\sigma\colon\{1,\dots,n\}\to\{1,\dots,n\}$ に対し $$\displaystyle\sum_{i=1}^nx_iy_i\geqq\sum_{i=1}^nx_iy_{\sigma(i)}\geqq\sum_{i=1}^nx_iy_{n-i+1}$$ これは本質的に次の問…

対称式の小ネタ

有理数 $a,b,c$ に対し, $a+b+c, 2(ab+bc+ca), 3abc$ が整数であったならば, $a,b,c$ は整数となることを示せ. $\alpha=a+b+c, \beta=2(ab+bc+ca), \gamma=3abc$ とおく. 方程式 $6(x-a)(x-b)(x-c)=6x ^ 3-6\alpha x ^ 2+3\beta x-2\gamma=0$ の解 $a,b,c$ …

数列の和から一般項を求めるときの場合分け

数列 ${a_n}$ の初項から第 $n$ 項までの和を $S_n$ とするとき, 次の等式が成り立つ. $$a _ n=\begin{cases} S _ n-S _ {n-1} & (n \geq 2)\\ S _ 1 & (n=1) \end{cases}$$ 数列 $a_n$ の初項から第 $n$ 項までの和 $S _ n$ が $S _ n=2 ^ n$ であるとき, …

軸の直交する放物線が4点で交わるなら共円

直交する放物線の軸が $x$ 軸, $y$ 軸に平行になるように座標軸を設定すると, 放物線の方程式は $py=x ^ 2+ax+b,$ $qx=y ^ 2+cy+d$ と表される. 共有点を $4$ つ持っているので, $$Q = \dfrac{ (q-a) ^ 2}{4} + \dfrac{ (p-c) ^ 2}{4} - b - d$$ とおくと, $…

1979年 京大理系数学 第3問

(1) は微分でゴリ押す以外にはこれしか方法がないはずですが, (2) に関してはこれが一番速くて自然だと思います. 勘違いをしていたらぜひ教えて下さい. (1) 変数 $t$ が $t>0$ の範囲を動くとき $$\begin{aligned} f(t) &=\sqrt{t}+\frac{1}{\sqrt{t}}+\sqrt…

2001年 東大文系数学 第4問

白石 $180$ 個と黒石 $181$ 個の合わせて $361$ 個の碁石が横に一列に並んでいる. 碁石がどのように並んでいても, 次の条件を満たす黒の碁石が少なくとも一つあることを示せ. その黒の碁石とそれより右にある碁石をすべて除くと, 残りは白石と黒石が同数とな…

2013年 阪大理系数学 第5問

$n$ を $3$ 以上の整数とする. $n$ 個の球 $K_1,$ $K_2,$ $\dots,$ $K_n$ と $n$ 個の空の箱 $H_1,$ $H_2,$ $\dots,$ $H_n$ がある. 以下のように $K_1,$ $K_2,$ $\dots,$ $K_n$ の順番に, 球を箱に $1$ つずつ入れていく. まず, 球 $K_1$ を箱 $H_1,$ $H_2,…

1980年 東大文系数学 第3問の自然な別解

1980年 東大文系 第3問 $n$, $a$, $b$, $c$, $d$ は $0$ または正の整数であって, $$ \left\{\begin{array}{l} a^{2}+b^{2}+c^{2}+d^{2}=n^{2}-6 \\ a+b+c+d \leqq n \\ a \geqq b \geqq c \geqq d \end{array}\right. $$ を満たすものとする. このような数…

多角形の自由度

数理哲人氏という方が学びエイドで「数理哲人の闘う数学【特別講座】戦後の東大」というマニアックな講座を開講なさっているのですが、そこで扱われていた次の問題がどうにも分からず一度挫折してしまいました。 1946年 帝大 工学部 第1問 同一平面上にある…

Cavalieri の原理 (トントン) で積分論を使わずに直交する円柱の共通部分の体積を求める

定理1. (Cavalieri の原理) $A$, $B$ を平面・空間上の図形, $l$ を直線とする. $l$ に垂直な直線・平面が $A$, $B$ によって切り取られる長さ・面積の比が常に $a\colon b$ ならば, $A$, $B$ の面積・体積比は $a\colon b$ である. Cavalieri の原理を適用…

整数の離散性

整数は幅 $1$ で均一に分布し, それを整数の離散性という……何を今更当たり前のことを, と思うかもしれません. 問題. (1991年 東大理系 第5問) $xy$ 平面上, $x$ 座標、$y$ 座標がともに整数であるような点 $(m,n)$ を格子点とよぶ. 各格子点を中心として半径…

線形漸化式の一般解

数列 $\lbrace p_n \rbrace$, $\lbrace q_n \rbrace$ に対し $$a _ {n+1}=p_n a_n+q_n$$ を線形漸化式というとき, 数列 $\lbrace a_n \rbrace$ の一般項を求めてみたい. ここで $p_n=0$ となる $n$ があれば, それは初項 $q_n$ の線形漸化式とみなせるので任…

ノミネート法

注意書き 清史弘 (2003) を読み終えたのですが, 解の配置は割と多くの参考書でも確立されているようなことが多かったのに対し, 2.4 「ノミネート方式」についてはネット上でも情報がほぼ見当たらない上に, 現在出版されている 清史弘 (2016) の p. 114 にし…

解の配置問題 集大成 〜なぜ判別式・グラフの軸・両端の値を考えるのか〜

はじめに $2$ 次関数 舞台設定 武器 解の公式 解と係数の関係 パラメータ分離 (定数分離) 一般論 $0$ 個 $1$ 個 開区間 閉区間 $2$ 個 開区間 閉区間 重複度含め $2$ 個 少なくとも $1$ 個 開区間 閉区間 $3$ 次関数 演習問題 参考文献 はじめに 解の配置問…

なぜ 1 は素数ではないのか?:too simple to be simple

多くの定義では素数を「$1$ より大きい正の整数のうち正の約数が $1$ と自分自身のみであるもの」としますが, いくつか最近思うところがあったのでメモしておきます. “up to 同伴” で同一視するんだからプラマイ含めて素数でいいじゃないか ($\pm2, \pm3,\do…

なぜ弧度法は well-defined なのか?

数Ⅱの三角関数に入るといきなり「弧度法」という謎のシステムを理解しなければ三角関数の単元自体に全くついていけず数Ⅲの微積分では大惨事になるというのはよく知られていることです. しかし大抵の場合は「$180^{\circ}$ を $\pi$ としなさい」という本当に…

n! が平方数になることはあるのか?

補題1. (Bertrand の仮説) 任意の自然数 $n$ に対して, $n 命題2. $n!$ が平方数となるための必要十分条件は $n=0,1$ である. 証明. 十分性は明らか. $n \geq 2$ のとき $n!$ は素因数を少なくとも $1$ つもつので, 最大の素因数 $p$ を取ってこれる. $n!$ …

開成中算数 2015 を解き直してみた

この前ちょうど中学入試があって「そういえば当時の自分は算数で結構テンパったなぁ」と思い返したので、5年がけのリベンジをしてみました。 第 1 問 グダグダ書いてあるが、大事なのは $\langle (\cdot, \cdot) \rangle \colon \mathbf{Z} \times [0,1)_{\m…

ベクトル裏ワザ集

高1のときに同級生向けに作ったプリントを発掘したので記念にブログに直しておきます. 表現は原文ママなので甘い目で見てください. あまり知らない人がやるとヤケドします. ご利用は計画的に. $\overrightarrow{a}=\left(\begin{array}{c}1\\3\\2\end{array}…

Galois 理論による対称式の基本定理の証明

対称式の基本定理を証明する方法として「単項式の指数の組に辞書式順序を入れて次数を下げていく」が有名ですが, 実は Galois 理論を用いて見通しよく証明できます. このことは日本語のウェブサイトでは (探した限り) どこにも書かれていなかったので, K会. …

Weyl の一様分布定理と Benford の法則

Arnol'd (1989) には次のような問題が載っています: Consider the first digits of the numbers $2 ^ n$: $1,2,4,8,1,3,6,1,2,5,1,2,4,\dots$. Does the digit $7$ appear in this sequence? Which digit appears more often, $7$ or $8$? How many times mo…

有向角を用いたミケルの定理の証明

Miquel の定理は点の位置による場合分けが非常に煩雑なので一般的には省略して証明されますが, 有向角を導入することで統一的に示すことができます. 発想自体は Chen (2016) の第1章に基づいておりますが, 定義が曖昧だったり証明のコーナーケースが埋められ…

群論としてのIMO2019第4問

問題1. (IMO2019第4問) 以下をみたす正の整数の組 $(k,n)$ をすべて求めよ: $$ k! = (2^n-1)(2^n-2)(2^n-4)\cdots(2^n-2^{n-1}).$$ 命題2. $q$ を素べきとする.$$ \vert \operatorname{GL} _ {n}({\mathbb {F}} _ {q})\vert =\prod _ {{k=1}} ^ {n}(q ^ {n}-…