Feynman の微分法 +α

$$f(x) = \frac{(1+x ^ 2)^{1/3}}{(1+\cos x)^{3/2}} \frac{\log x}{x ^ 2}$$ のような複雑な関数を微分することになったとき, いちいち商の微分法と連鎖律を使っていては非常に大変ですから, Feynman は「微分可能な関数 $f\colon\R\to\R$ が $f'(x)=f(x)(\log{f(x)})'$ を満たす」ことを利用して次のような微分法を考えました.

  1. $f(x)$ の横にカッコを書く.
  2. 各項を $$\text{指数}\times\frac{\text{その項の微分}}{\text{その項}}$$ と変換してカッコの中に書く.
  3. 整理する.
非常に重要な注意. Feynman やその孫引きは素朴にこのように説明していますが, 項が $f(x)^{g(x)}$ の形であれば $g'(x)\log{f(x)}$ も付け加える必要があります.

というわけでまずは

$$f'(x) = \frac{(1+x ^ 2)^{1/3}}{(1+\cos x)^{3/2}} \frac{\log x}{x ^ 2} \bigg( \cdots \bigg)$$

と書き, 分母にある項は指数が負になることに注意するとカッコ内は

$$\left( \frac{1}{3} \frac{2x}{1+x ^ 2} - \frac{3}{2} \frac{-\sin x}{1+\cos x} + 1\cdot\frac{1/x}{\log x} - 2\cdot\frac{1}{x} \right)$$

となります. あとはテキトーに整理してあげてください.

このテクニックは商の微分法のエレガントでより一般的な代用品にもなっています. 実際, Feynman は $g(x)=\dfrac{x ^ 2}{1+x ^ 2}$ のような関数もこのやり方で微分していたそうです*1.

$$\begin{aligned} g'(x) &=\frac{x ^ 2}{1+x ^ 2}\left(2\cdot\frac{1}{x}-1\cdot\frac{2x}{1+x ^ 2}\right)\\ &=\frac{2x ^ 2(1+x ^ 2)-2x ^ 4}{(1+x ^ 2) ^ 2x}\\ &=\boxed{\frac{2x}{(1+x ^ 2) ^ 2}} \end{aligned}$$

先ほど注意したような場合の例も計算しておきましょう.

$$h(x)=\frac{x ^ x}{2^{\sin ^ 2x}}$$

  • $x ^ x$ からは $1\cdot\log{x}$ と $x\cdot 1/x$,
  • $2^{-\sin^{2}x}$ からは $(-\sin^{2}x)'\log{2}=-2\log{2}\cdot\sin{x}\cos{x}=-\log{2}\cdot\sin{2x}$

が出ることに注意すると,

$$h'(x)=\frac{x ^ x}{2^{\sin ^ 2x}}(\log{x}+1-\log{2}\cdot\sin{2x})$$

Wolfram Alpha 先生に投げてみましょう.

f:id:all_for_nothing:20201201202956p:plain

優勝!😉

参考文献

Neer, J. T. (1970-1971). Feynman Hughes Lectures, 5, 10-11.

*1:ただし講義録にある計算は分母を $1+x$ と見間違えているので誤っています.