グロタンディーク「出版差止めの意向表明」

本文

出版差止めの意向表明

アレクサンドル・グロタンディークより

私が著したどんな作品も文章も、そしてその翻訳すべても、紙媒体であれ電子媒体であれどんな形式であれ、全文であれ抜粋であれ、科学的であったり私的であったりする文章からのものであれ、誰かに宛てた手紙からのものであれ、私は出版も再版もしないつもりです。そのような文章を校訂したり普及させたりすることが、かつて私の同意なく行われたのであろうことや、いつかここで明示された私の厳格な意思に反して私が生きている間に行われるのであろうことは、どんなものであれ私の目には不正と映ります。私の知れる限りにおいて、そのような海賊版や、私が書いた文章を私の同意なく(引用可能な数行程度を超えて)収めている他のすべての出版物の責任者には、それらの書籍を市場から回収するように要求し、そのような書籍を所蔵する図書館の責任者には、当該の図書館からそれらの書籍を廃棄するように要求するでしょう。

もしもここで明確に表明された私の著者としての意向が空約束に終わることになるのであれば、どうか違法版の責任者および関係する図書館の責任者に(私の意向がどちらにも伝わり次第)そうして軽視したことによる恥が降り掛かりますように。

自宅にて 2010 年 1 月 3 日

アレクサンドル・グロタンディーク

解説

グロタンディークは 1970 年頃に IHES を辞職して隠遁生活を送るようになりましたが、2010 年にリュック・イリュージーに次の直筆の手紙を拡散するように指示し、スコット・モリソンがそれを公開しました。翻訳権についての免責事項が実質的に不要であることは、本文をご覧になれば了解していただけると思います。

グロタンディーク直筆の手紙

このように書き残してからグロタンディークは 2014 年に逝去しました。その三年後にはモンペリエ大学から彼の大量の手稿がデジタルアーカイブとして公開され、さらにその五年後には IHES の協力のもとでガリマール社から『収穫と蒔いた種と』の校訂版が出版されるに至りました。

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