獲得金メダル! p. 24 の図の誤り

すでに出版社に報告はしたのですが、訂正が出される気配がないので記事にしてしまいます。

周の長さが $6$ の三角形の面積が $\sqrt{3}$ 以下であることを証明しよう.

周の長さが $3$ で辺の長さが $x$, $y$, $6-x-y$ の三角形の面積の $2$ 乗は, $f(x,y)=3(3-x)(3-y)(x+y-3)$ となる (Heron の公式). $x$, $y$ の動く範囲は次のような有界領域 $D$ である:

ここで境界上の点は「退化した三角形」に対応するので本来は考える対象外だが, これらの点も定義域に含めておくことにする (定義域をコンパクトにするため).

まず「周の長さが $3$ で」(p. 23、最終行)とあるのは「周の長さが $6$ で」の誤植でしょう。しかし、有界領域 $D$ の図(p. 24)は全く正しくありません。実際には $0\leqq x\leqq 3$, $0\leqq y\leqq 3$, $3\leqq x+y\leqq 6$ になります。つまり▲ではなく▼です。

$D$ はコンパクトなので, $f$ は $D$ 上で最大値をもつ. 境界上では $f(x,y)=0<f(2,2)$ なので, 最大値は $D$ の内部でとる. したがって, 最大値をとる点は極値点でもある.

$f$ の極値点を求めるため偏微分を計算すると, $$\frac{\partial f}{\partial x}(x,y)=3(3-y)(-2x-y+6),\quad\frac{\partial f}{\partial y}(x,y)=3(3-x)(-2y-x+6)$$ となるので極値点は $-2x-y+6=-2y-x+6=0$ となる $(x,y)$, つまり $(2,2)$ である. 以上より $f$ の最大値は $f(2,2)=3$ とわかり, 示された.

上の図だとそもそも点 $(2,2)$ が領域に含まれてすらいません。たまたま伺う機会があったので 2010 年 3 月の春合宿に参加なさった方に配られた教材を参照していただくと、どうやらこの割と重大な誤りは当時から存在していたようなので、いわゆる「編集者のさかしら」や組版上の伝達ミスが起こったわけではなさそうです。