装置
まずこのようなサイクルを実現するには物理学的にどのような状況を作ればよいのか考えておく必要があります.
容器の底から排水口までの体積を $2V_0$, 大気圧を $p_0$ とします.
- ピストンを半分の高さに置きます. (C)
- ピストンが動かないように水と熱を同時に加えて, 水位が排水口の高さに届いたら水も熱も止めます. (A)
- ピストンをゆっくりと押して水を排水口から捨てます. (B)
- 1 に戻る. (C)
上手く水の密度などを設定してやれば, このようにして所望のサイクルが実現できます.
よくある間違い
1-サイクルで気体が真に吸収する熱量を $Q _ {\text{in}}$, 外界へする正味の仕事を $W _ {\text{net}}$ とすると, 熱効率は $\eta=\dfrac{W _ {\text{net}}}{Q _ {\text{in}}}$ で定義されます. これは正しいのですが,
$$e_1=\frac{\frac{3}{2} p _ {0} V _ {0}-p _ {0} V _ {0}+0}{\frac{3}{2} p _ {0} V _ {0}+\frac{3}{2} p _ {0} V _ {0}}=\frac{1}{6}$$
とすると間違いです. これは A→B の過程が常に吸熱反応であるとは限らないことに起因しているので, (私が知っている限り) 2通りの解き方が可能です.
また, 面倒なので $P=\dfrac{p}{p_0}$, $v=\dfrac{V}{V_0}$ と規格化しておきましょう.
方法1
状態 $X$ を $(P,v)=(3-x,x)$ とします.
$$\begin{aligned} \frac{Q_{\mathrm{A\to X}}}{p_0V_0} &= \frac{3}{2}( (3-x)x-2\cdot 1)+\frac{1}{2}(2+(3-x))(x-1)\\ &= -2\left(x-\frac{15}{8}\right) ^ 2+\frac{49}{32} \end{aligned}$$
よって吸熱反応は $1\leq x\leq\dfrac{15}{8}$ で起こり, その最大値は $\dfrac{49}{32}$ なので,
$$e_1=\frac{\frac{1}{2}}{\frac{49}{32}+\frac{3}{2}}=\frac{16}{97}$$
たしかにこれは最初に間違って計算した $\dfrac{1}{6}$ より小さくなっています. 放熱反応をちゃんと考慮に入れて外したからです.
方法2
断熱線は $\dfrac{dP}{dv}=-\gamma\dfrac{P}{v}$ となるので, $-1=-\dfrac{5}{3}\dfrac{P}{v}$ すなわち $P=\dfrac{3}{5}v$ と直線 $P=-v+3$ の交点が, 吸熱反応と放熱反応が切り替わる状態を表しています. 解いてみると $(P,v)=\left(\dfrac{9}{8},\dfrac{15}{8}\right)$ となります. A からこの状態 M まででは断熱線を上に横切るので(もし断熱過程だったら断熱線の温度になるはずなのにそれよりも高い温度だということは熱を貰っていなければ不可能なので)吸熱過程です. M から B まででは下に横切るので(もし断熱過程だったら断熱線の温度になるはずなのにそれよりも低い温度だということは熱を放出していなければ不可能なので)放熱過程です. したがって
$$\begin{aligned} \frac{Q_{\mathrm{A\to M}}}{p_0V_0} &= \frac{3}{2}\left(\frac{9}{8}\cdot\frac{15}{8}\right)+\frac{1}{2}\left(2+\frac{9}{8}\right)\cdot\frac{7}{8} \\ &= \frac{49}{32} \end{aligned}$$
あとは方法1と同じ流れです.
なお, 一般にこのような吸熱・放熱が切り替わる点は $P$ 切片と $v$ 切片を端点とする線分を $\gamma\colon1$ に内分する点になります.