大昔にロシア語を勉強したときに躓いたポイントを書き出していたのを発見したのでまとめておきます。DeepL がロシア語に対応してるから要らない? まあそうお堅いことは言わずに……
キリル文字
だいぶ前の湧源の集まりで、先輩とひたすら徹底討論して「いかにして読みやすくキリル文字を書くか?」を試行錯誤した末に次の画像が得られました。
筆記体?
- стн, здн: честный, грустный, известный, праздник, поздно, звёздный
- ндск, нтск: голландский, финляндский, гигантский, интендантский
- стск: марксистский, туристский
- стл: счастливый, завистливый
- рдц: сердце
- вств: здравствуйте, чувство
- лнц: солнце
素材
色々あるように見えますが、実はこのサイトだけで全てが事足ります。
追記. これも凄い。hdl.handle.net
ピンク本とかも有名ですけど、基本的にはこれで大丈夫かなと。
そういえばピンク本の p. 347 に理解できない部分があったのもメモしていました。
主語は主格の名詞かそれに定語が付いた名詞句が基本ですが、時に次のように前置詞とその目的語から成る前置詞句の場合もあります。
В каждую комнату вошли по пять студентов.
それぞれの部屋に5人ずつ学生が入った。
これはただの前置詞句の前置であって、主語はあくまでも по пять студентов ですよね? たとえば Into each room go five students. の主語は名詞句 five students であって、これを前置詞句 into each room などと答えたら少なくとも英語学では零点です。
追記. 読者の方からご指摘を頂いて気付いたのですが、ここでの「前置詞句」は「前置詞から始まる句」というだけであって、実質的には AdjP ではなく NP を指しているようです。したがって誤りとは言えず、主語はあくまでも по пять студентов で良いようです。なお по の格については色々と面倒な使い方があります。
相と体
ロシア語文法の «相» と、一般的な語学における «相» とはまったく異なる概念である。ロシア語文法の相とは一般的な語学における «態» のことであり、一般的な語学における相とはロシア語文法における «体» のことである。単なる日本語訳の違いなのだが、なぜこのようなややこしいことになったのか知らん。
ロシア語 その他の言語 能動 vs 受動 相 態 voice 完了 vs 不完了 体 相 aspect
生格
生格は属格(学習英文法だと所有格)のことです。もちろん genitive の語源を考えれば生格の方が適切な訳と言えるかもしれませんが、いきなり出てくるので注意が必要です。
疑問文
平叙文のイントネーションは、最重要の単語(普通は文末)の有力点母音で音を下げる。
疑問文のイントネーションは、聞きたい単語の有力点母音で音を上げる。
慣れると分かるようになりますが、日本語とも英語とも違うイントネーションなので注意が必要です。しかしながら、欧米文化の影響が強まったためか、若者の間では英語っぽいイントネーションが使われることもあると聞いたことがあります。
肯定・否定
ロシア語では、
- Ты́ студе́нт? 「きみは大学生?」
- Да́, я́ студе́нт. 「うん、大学生だよ」
- Не́т, я́ не студе́нт. 「いや、大学生じゃないよ」
- Ты́ не студе́нт? 「きみは大学生じゃないの?」
- Не́т, я́ студе́нт. 「いや、大学生だよ」 ⇒ 疑問を否定しているため нет を使う。
- Да́, я́ не студе́нт. 「うん、大学生じゃない」 ⇒ 疑問を肯定しているため да を使う。
- Не́т, я́ не студе́нт. 「いや、大学生じゃない」 ⇒ 答えが否定文のため нет を使う。
である。見ての通り、日本語とまったく同じ感覚である。英語と違い、否定疑問文に対して «Да́, я́ студе́нт.» と答えることは許されない。
否定疑問文に対する «Не́т.» には、大学生である場合と大学生でない場合とふたつの場合があり得る。このためもあって、ロシア人は、否定疑問文に対して Да́ や Не́т だけで答えるということをしない。
よくある「日本語だけが非論理的なのだ!」を真っ向から否定できる有力な材料です。もし相手が「ロシア語も非論理的!」と反論してきたら、それは「西側諸国の資本主義に忠誠を誓うことこそが論理的なのだ!」ということを迂言的に表現しただけなので、あなたの政治的思想に応じて反応を調整すれば良いでしょう。
空所化
結構前から気になっているんだが、ロシア語って gapping できるんだろうか? Она простила его, и он простил её. を Она простила его, и он её. にできるのかな?
可能(Oxfordにも"Я пойду в одну сторону, а вы — в другую."という例文があった) まあбытьや主語も(わかれば)省略できるくらいだしその辺はかなり寛容だと思う
— は義務的かな?
別にそうではないけど、少なくとも両方とも代名詞ではないような場合は推奨される(Токио ― столица Японии.みたいな)
え推奨されるってだけだったん?
だいたいどこを見ても「一般的」みたいな書き方がされている
えーじゃあ古かったり不親切だったりすると省略されてマジのゼロコピュラになんの???
恐らくそういう解釈で合っている(まあ珍しく語順もかなりバラバラに出来ちゃうような言語だし...)
千の風になった