なぜ弧度法は well-defined なのか?

数Ⅱの三角関数に入るといきなり「弧度法」という謎のシステムを理解しなければ三角関数の単元自体に全くついていけず数Ⅲの微積分では大惨事になるというのはよく知られていることです. しかし大抵の場合は「$180^{\circ}$ を $\pi$ としなさい」という本当に意味の分からない説明で済まされることがほとんどです. もちろんこれなら当然 well-defined ではあるが, もう少しマトモな場合だと次のように定義します: 「半径 $1$ 弧長 $1$ の扇形の中心角を $1$ (ラジアン) とする」あるいは「半径 $r$ 弧長 $l$ の扇形の中心角 $\theta$ を $l=r\theta$ となるよう定める」と.

中2のころ, なんでこんなよう分からん定義をするのか全く分からんかったので, おおよそ次のような説明を考えて自分は納得しました. 参考になれば幸いです.


半径 $r$ と中心角 $\theta$ を定めると扇形は一意に定まる. したがって弧長を $l=l(r,\theta)$ とおける. 初等幾何的な考察から任意の $k\in\mathbb{R}_{\geq0}$ に対し $$l(kr,\theta)=l(r,k\theta)=kl(r,\theta)$$ であるから $l(r,\theta)=r\theta\cdot l(1,1)$ である. $l(1,1)=1$ となるように単位角度を定めるシステムを弧度法といい, 角度は無次元量であるがあえて単位をつけるとすればラジアンである. 一方 $l(1,180)=\pi$ となるように定めると度数法となり, 伝統的に度数法の角度であることを強調して右上に丸を書いている.

ここで $l(1,1)=1$ としたが, $\theta=1$ が ( $0^{\circ}$ から $360^{\circ}$ の範囲に) 存在することは次のように示せる. まず $r=1$ を固定すると $l=l(r,\theta)=l(1,\theta)=l(\theta)$ として一変数関数と思え, これは初等幾何的な考察から狭義単調増加かつ連続である. したがって $l(0^{\circ})=0$, $l(60^{\circ})=\pi/3>1$ なので ( $\pi/3>1$ の評価は円周に内接する正六角形を書けばよい), $0^{\circ}<1<60^{\circ}$ で存在することが示された.